要請書

当会は、統一教会に対して解散を要請します。

要 請 書

法務大臣   齋藤 健  殿
総務大臣   松本剛明  殿
文部科学大臣 永岡桂子  殿
厚生労働大臣 加藤勝信  殿
外務大臣   林 芳正  殿
消費者担当内閣府特命大臣
河野太郎  殿
こども政策、孤独・孤立対策担当内閣府特命大臣
小倉將信  殿
警察庁長官  露木康浩  殿

 2022年(令和4年)11月28日

オウム真理教家族の会
会 長 永  岡  弘  行
http://aum-kazoku.boy.jp/
info@aum-kazoku.boy.jp

〒231-0015 神奈川県横浜市中区尾上町5-69 KIT関内ビル5階
とらすと法律事務所気付 TEL045-680-0720 FAX045-680-0722

要 請 の 趣 旨
1 宗教法人世界平和統一家庭連合(以下「統一教会」という)につき、宗教法人法(宗教 法人法78条の2第1項3号、同法81条1項1号)の解散請求を速やかにするよう求めます。
2 統一教会につき、宗教法人法78条の2に基づく質問権について徹底した行使すること  を求めます。
3 本年10月7日付の日本脱カルト協会が要請した、6点の要請と8点の具体的施策の実 施をされるよう求めます。
特にすべてのカルト問題に対応する相談窓口を作って下さい。
4 オウム真理教に対する1999年(平成11年)12月17日に関係省庁連絡会議が示した体制と施策の当会としたの評価を述べつつ、下記の要請の理由欄に記載する通り、各 省庁の有機的かつ機動的な全国的展開を求めます。

要請の理由・具体的な要請
1 オウム真理教家族の会(旧「オウム真理教被害者の会」)は、1989年10月設立、オウム真理教に子どもらを絡めとられた家族らの集まりです。1995年3月からの捜査と刑事裁判により、設立直後の坂本弁護士一家殺人そして松本サリン事件、地下鉄サリン事件その他の多数の事件を起こした、あのオウム真理教と長く対峙してきました。
そして今も、主流派であるアレフ、ひかりの輪、山田らの集団その他の分派に子どもらがからめとられたままの家庭も多く、更に今も時に入信していく家族らを持つ方からの連絡、参加がある状態です。
当会は、この間、我々の家族が広く日本国民と国に多大な被害と苦悩を与えたことにつき、改めてここに深くお詫び申し上げます。同時に、国や自治体において、宗教法人オウム真理教の解散命令の申立、破産申立、破産特例法、団体規制法、被害者救済法の制定、そしてあの強制捜査の直後の児童福祉法に基づく子どもらの一時保護等に加え、1999年の省庁連絡会議に基づく対応をとられたことにつき、深く御礼申し上げます。

2 今次、統一教会の問題点が広く知られ、カルト問題への対策が求められています。
統一教会は、オウム真理教よりもはるか前から日本国内で、「親泣かせの原理運動」として知られ、かつ霊感商法により日本国民に多大な被害を及ぼし、苦しめてきた典型的な破壊的カルトでした。そのメンバーの心理状態とこれへの対策は、私どもとしても大変に参考になりました。当会家族らとして本人の心理状態の把握、親が知るべき教訓、対応方法として、統一教会メンバー対応を中心として記述してある「マインド・コントロールの恐怖」(恒友出版、スティーヴン ハッサン著,浅見定雄訳、1993年)が、必須の文献でもありました。
その統一教会について、今、対策が求められています。
そして、国民にあっては、今、統一教会のみならずこれら破壊的カルト団体の防止、拡大の抑止、そしてからめとられたメンバーの脱会と社会復帰、そしてその子どもらの健全な成長とを求めていると思われます。
そこで、当会としてここに要請する次第です。

3 まず、統一教会の問題をめぐっては、全国霊感商法対策弁護士連絡会の本年9月16日「統一教会の解散請求等を求める声明」、10月17日付「質問権等の行使に関する声明」、11月4日付「今国会での被害者救済に向けた法整備を求める」声明につき、全面的に賛同し、要請の趣旨記載1及び2のとおり求めます。
統一教会の問題性、違法性は、これら声明に明らかなとおり、家庭崩壊、霊感商法特にその勧誘活動の違法性など、まことに明白です。
宗教法人としての解散は、統一教会においても当然のことと確信します。

4 当会は本年10月7日付の日本脱カルト協会が要請した、6点の要請と8点の施策に全面的に賛同し、要請の趣旨記載3のとおり求めます。
日本脱カルト協会は、オウム真理教事件を契機として、宗教社会学者、社会心理学者、精神科医師、弁護士そして我々家族や様々な破壊的カルトから脱会してきた者らが交流する中、1995年11月に成立したものです。当会メンバーらもこれに深くかかわってきました。
その議論の中で、要請した6点と施策の8点は、当会も強く求めるものです。
特にすべてのカルト問題に対応する相談窓口を作って頂きたく存じます。

5 さて、破壊的カルト集団オウム真理教に関連して、関係省庁連絡会議が1999年(平成11年)12月17日に示された体制は、後記の通りです。これらは心配する家族、脱会してきた者、その社会復帰にそれ相当に役立ちました。
ここに御礼申し上げます。
 以下、これを振り返って説明し、今回の統一教会を初めとする破壊的カルトについての、国や自治体の各機関がなすべきことの参考として下さるよう求めます。

具体的には、次の通りです。
①  警察庁の関係では、各警察署において、一般的及びオウム真理教信者の心理についての知識と認識が当時は相応に充実し、相談があった場合の教示、各所の専門家への紹介がなされました。
市民に最も身近な窓口は、全国津々浦々にある警察署です。警察としても、地域の人心を安定化させ、また一元的な情報管理ができたと思われます。その場合、治安の観点としての情報収集に止まらず、カルト問題の専門家や相談窓口などを教示された方も少なくなく、これが極めて有効でした。
 したがって、今次においても、各警察署にあって、その犯罪被害相談なり家事トラブルの相談にて、破壊的カルトの把握、カルト問題の専門家や相談窓口などを教示するシステムとこれが出来得る担当警察官の教育体制を作って下さい。

②  法務省、人権擁護の関係では、すべてのオウム真理教の信者、元信者が罪を犯したとか、一般国民とは全く異なった異常な存在であるといった偏見が増えてしまうことが、相応に止めることができました。
 思うに、今次、統一教会2世を初め、破壊的カルトにからめとられた家庭の子どもらの心理的安定、社会復帰の道を確保していくためには、親が入ったままである場合には、より精緻かつ心理状態に配慮した支援が必要であることは間違いありません。
オウム真理教の場合は、団体規制法の関係で公安調査庁職員が家族対応をし、また観察処分の調査のため、現役メンバーと対する場面が多かったものでした。
ですが、統一教会その他の破壊的カルトの場合は、そのような事態はないものと思われます。
報道によれば少年鑑別所を母体とした全国52か所の鑑別所にある「法務少年支援センター」を元として対応する案が出ているようですが、それは例えば「虐待心理被害・法務支援センター」とでも別の名前に変えて、電話と面談体制をとる、18歳や20歳以上の被害者にも対応できるようにする、非行問題ではないのですから当該専門職員への教育体制を作るということとしてこそ、有効と存じます。形ばかりの電話相談窓口に止まらない体制をとられるよう希望します。

③  文部科学省の関係では、オウム真理教の場合は、児童の小学・中学への復学ができ、また年齢を重ねてしまった者は、夜間中学に入ることができるなどして、社会復帰と健全な社会人となる助けとなりました。各学校、教諭のカルト心理、脱会者心理について、詳細に教示する資料を用意できればより良かったと思います。
統一教会その他の2世の場合は、高等教育が受けられなかった、正式な大学に行けなかったといった事態が多いかと存じます。そこで、文部科学省及びこども政策、孤独・孤立対策担当内閣府特命大臣にあっては、年齢にこだわることなく、進学を望む若者につき奨学金を拡充しつつ給付決定をするといった施策が有効だと確信します。どうぞご検討下さい。

④  総務省の関係では、オウム真理教にあって、各自治体においてオウム真理教問題と信者心理について相応の認識が得られ、相談あった場合の教示、各所の専門家への紹介がなされました。信者でない親に、子どもの居所、状態が伝えてもらえたこともあり、幸いでした。
 今次の統一教会や他の破壊的カルト対応においては、むしろメンバーである親に知られないままに、対応すべきである場合が多々あると存じます。市役所等にも子ども自身からの相談窓口を作るよう、そのカルト問題の研鑽を積むよう、ご指導ください。その際、行為能力を持たない未成年であっても、意思能力が見られる限り、児童相談所などとタイアップしての対応をされたくお願い申し上げます。

⑤  厚生労働省の関係では、精神科医療での対策・充実が重要です。
オウム真理教にあっては、精神科病院が独自で、また児童相談所・児童養護施設と当会関係者がタイアップして、オウム真理教の修行、薬物等によるとみられる解離性人格障害や統合失調症の発症などにつき相応に適切に対応されたこともありました。うち東京都は、日本脱カルト協会発行の「心の健康づくりハンドブック」を精神科医に配布してくれました。
どの破壊的カルトにおいても、脱会者は、「心にポッカリ穴があく→ひどい自己嫌悪に陥る→教祖や教団を恨む→どこかでこれらを乗り越える」という経過を踏むものであり、その後になって初めて社会復帰ができるものです。
オウム真理教の場合は、この鬱状態にあって約3分の1は精神科病院の診療を受け、その少なくない者は入院に至った感があります。また、後のフラッシュバックによるのか、先々を考えての絶望によるのか判然としませんが、仕事もしっかり数年間続けてきた後に自死した者もおり、脱会者らからは誰々も死んだ、死んだという話を聞く状況であって、相当数が自死していると思われます。
これらの事態は、他の破壊的カルトにあっても、そうは変わるものとは思えません。つきましては、今次の統一教会やその他のミニカルトを含む破壊的カルトにあっても、広く精神科医に対し、カルトメンバーの心理と脱会後の心理状況についての一般的な知見を高める体制をとって下さるようにお願い申し上げます。

⑥  同じく厚生労働省の関係では生活保護の適用関係が重要です。
オウム真理教の場合、脱会者は全額を布施した後に出てきたものであり、生きていくことができるか自体の心配も脱会の障害となっていたところ、スムーズに生活保護が適用されました。
これは極めて有用でありこれがなければともかく雨露をしのげる場所がオウムの施設しかないことから、信者にあって脱会の意思をもってもできないままの者も多くいたと思われます。
この事態は、今次の統一教会における2世問題と類似する処が多々あると思われます。厚生労働省にあっては、各自治体の生活援護課などにおいて、若者から「親が統一教会から抜けず家を出てきた、どうしたらよいか」といった相談があるとき、「親とよく相談して」「自治体としては親に連絡する外ない」などとして切ることなく、破壊的カルトの実態を理解されつつ、居住場所の確保と生活の糧の確保につき、丁寧かつ機動的な対応ができるように措置を取られるよう求めます。
 また、⑤及び⑥の関係にあって、児童相談所・児童養護施設の体制拡充、タイアップの体制も確立していただけるよう求めます。

⑦  厚生労働省の関係では、再就職の問題も重要です。オウム真理教にあっては、履歴書の中に長年の空間をあける外ない方もいて苦慮されたところ、相応に適切な指導がなされたこともありました。
厚生労働省にあって、ハローワークその他に統一教会の2世らが訪れた時には、給付金ある職業訓練その他も紹介しつつ、便宜を図るよう求めます。

⑧  外務省関係でも、破壊的カルト問題は関係します。
オウム真理教にあっては、1995年3月、教祖麻原彰晃が出国しようとしたときどう対応するかが課題となり、その後もオウム真理教の出家者、幹部の出国のこと、また真実に脱会した後も国によっては入国できないという問題がありました。ロシア外、他国からの情報入手も、もちろん課題でした。
 今次の統一教会にあっては、韓国に約6000人いるという、統一教会の指示に従い韓国人男性の妻となっている日本人妻と、その子どものことが課題となります。日本大使館などにおいて相談窓口を作るなどして、今後、帰国の便宜を図っていかなければならないことは確実です。
子どもの福祉体制についても、さまざまな創意工夫を期待します。

6 カルト立法の課題があります。
洗脳とマインド・コントロールに基づく「支配と服従」の関係を成立させ、隠された目標を実現するためには違法行為も繰り返してする集団、すなわち破壊的カルト集団の問題と、宗教問題は別の事柄です。
あわせて、「果てしなく信じる」ことを本質とする宗教として成立した破壊的カルトこそが、大規模に極端な違法行為に走ることは、統一教会やオウム真理教を見るに、明らかです。
このことについては、政教分離が徹底していると言われるフランスの「セクト対策立法」を参考とすることができますが、国民性や宗教事情が相当程度違うことも間違いありません。
そこで、消費者担当内閣府特命大臣や法務省にあって、まずは消費者契約法・民法で取消権の課題等を、刑事法において詐欺罪と類似した無知脆弱性を利用する罪を検討されるよう求めます。

7 最後に、今次の統一教会問題でも、子どもと親の関係の法制度がいかにあるべきかの課題があります。
子が未成年の場合は、親が子への宗教等の教示や集会の参加等につき、どこまで関与して良いのかという問題があります。オウム真理教では子どもが信者になり、出家して親はその所在さえわからないという事態がありました。統一教会にあっても子どもが信者となった事例もまた多いものでした。
他方、2世問題では、親が入信して、子どもの幸福追求権、信じない自由を含めての信仰の自由が侵害されているのではないか、また子どもへの様々な対応、生活費・教育費さえ無視しての多額の献金などすることが虐待にあたるという問題があります。
どの課題についても、故坂本堤弁護士の「人を不幸にする信教の自由はない」という言葉を忘れずに、対応して頂きたいと考えます。

以上のとおり、要請します。
以 上

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